2011年8月31日水曜日

夏も終わりに、音場に関してつらつらと書いてみる


最近、何故かシンセプログラミングしています(注:音作りのことではなく、実装のことです)。midif0nとは直接関係ないのだけれど、抜けられなくなっています。実装のいくつかは、間接的にフィードバックする予定ですけど。


題名の通りの話題ですが、何故この話題が出てくるのかと言えば、3DSのサラウンドに関して調べていたところ、興味深い話を見かけたからです。曰く、"現在の視野角が狭い裸眼3D表示はバーチャルサラウンドと相性が良いと言う話"です。

バーチャルサラウンドの原理を調べた所、仮想的にスピーカーとリスニングポジションを決めて、現実世界の音の伝搬と同じように音を加工するというのが基本的な仕組みです。ところがヘッドフォン以外の方法で仮想的にリスニングポジションを固定化するというのは、通常難しい訳です。3DSでは左右に視野角が狭いのを逆手に取って、それと意識させずユーザーの頭の位置、つまり耳の位置(リスニングポジション)が固定化されるので、適切な音場を提供しやすいという訳です。こういった制約を逆手に取るようなやり方は、なかなか巧いと感心させられます。それと相まって、良いスピーカーが内蔵されているので、サウンドデザイナーとしてはリスニング環境を想定しやすくて便利だろうなと思います。

しかし、僕としてはインタラクティブメディアについては、リスニング環境より、コンテンツ内での音場の形成の方により興味があります。こちらもちょうど3DSで"謎惑館〜音の間に間に"(※注:公式サイト 音あり)という音響的におもしろそうなソフトが発売されています。このソフトは立体音響Otophonics(オトフォニクス)を採用していて、ヘッドフォン推奨となっています。さらに、こちらのblogの記事によると、"モノラル、3DS内蔵のリアルタイムバイノーラルなども併用"されているそうで、なかなか興味深いものになっています(理由は、パフォーマンスとリアリティのバランスによるものだと推測)。立体音響がどのようなものかは試聴できますので、興味がある方は聞いてみると良いでしょう。

ところでオトフォニクスという言葉を聞いた時、即座に Holophonics(ホロフォニックス)が頭に浮かぶ方もいるのではないでしょうか?そして、ホロフォニックスと言えば、個人的にはPink FloydのThe Final Cutをまず最初に思い出します。このアルバムには、戦慄するようなミサイルのSEを聞ける箇所がありますが、これは今まで数多く聞いたSEの中でもかなり印象に残っています。
※こちらもリスニング環境は、ヘッドフォン推奨になるでしょう。

※Amazonで一番売れているもの。残念ながらUS版。2004年リマスター。2011/9/28に新しいリマスターが出ることに注意。音楽自体は人を選ぶと思います。
このリマスター自体は未聴のため、4曲めに挿入されている"When The Tigers Broke Free"が馴染んでいるかわかりません。蛇足ってことはないと思いますけど。

もうずいぶん前のことになりますが、Roger WatersのLiveに行った際にも、このSEを聞く機会がありました。ここで興味深いことは、アルバムはホロフォニックスですが、Liveでは会場を含めて音場を構築している訳で、音響設計は全然別物です。そして前述のSEは、会場内の前方のスピーカーから発せられ、後方に落ちるのですが、そのSEが与える"印象"は良い意味で変わらず、より鮮烈でした。余談ながら、演奏はかなりの爆音でLiveの後はしばらく耳の感覚が元に戻りませんでした。

さて仮想的な音場と言えば、単なるリバーブそれ自体でも仮想的な音場を提供でき得る訳ですが、個人的には、より関心が高いのがLeslie speaker(ロータリースピーカー)です。レスリーのシミュレーションは回転スピーカーとその音を拾うマイクの位置を含めてシミュレーションができるものもあります。つまり音場を仮想的に構築するのに、相応しい題材だと言えます。しかしながら、その実装はドップラー効果、真空管アンプシミュレーション、リバーブなど複数のエフェクターの組み合わせになり、最も複雑と言えるかもしれません。
そんな訳で、3Dサウンドライブラリを見つけると、"レスリースピーカーが簡単に実装できないか?"と期待してしまいます。ただ、モジュール的なAPIで構成されていないと、構築が難しいので、まだ試す機会には恵まれていません。単純なストリーム再生であれば、ドップラー効果やリバーブは、OpenALで簡単に実現できるのですが。個人的にレスリー好きなこともあり、時間がかかってもレスリーは実装したいなと思っています。どういった形で提供するかはまだわかりませんが。

ついでにドップラー効果と言えば、The Beach BoysのPet Soundsの最後の列車のSEを思い出します。これも昔の話ですが、Brian WilsonのLiveに行った時、このSEが流れ、浸らせてくれました。

※Amazonで一番売れているもの。US版 2001年。名盤。正直、Pet Soundsに関しては、CDのバージョンが多すぎて何だかよくわかりません。Bonus Trackがついているものは蛇足になる恐れあります(取り込んでしまえば関係ありませんが)。

さて、ここで取り上げた2つのアルバムは内容は全く異なるものですが、それぞれ別の意味で8月初旬&中旬, 下旬を思わせます。前者は"戦後と核"を扱っている故に、後者は文字通り"夏の終わり"故に。

2011年8月8日月曜日

Octave導入, emo-frameworkに興味を持つ

最近、波形分析に使用するため、FFTアナライザとかOctaveを導入しています。Octave簡潔で良いのですが、インデックスが1から始まるのがどうも馴れません(同様の理由で、LuaよりSquirrelの方を好む)。普段、波形分析なんかしないので、なかなか新鮮です。

最近iOSとandroidのマルチプラットフォームライブラリを捜していて、emo-frameworkというものを見つけました。ライセンスはNew BSD License、OSごとのサウンドとグラフィックスの構成は以下のようになっていました。
  • Android 2.3以上  下位レイヤー( OpenSL ES + OpenGL ES)
  • iOS 下位レイヤー( OpenAL(iOS版) + OpenGL ES)
マルチプラットフォームライブラリでは、ライセンス/使用言語/プラットフォームを重視するのは当然ですが、emo-frameworkは僕にとって方向性がちょうど良い具合になっています。そんな訳でチュートリアルが導入されたら、ちょっと触ってみるつもりです。ざっと見た所プログラム、ドキュメント共にまとまっていて、関心されられます。そんな訳でライブラリのversionは0.1.2と低いけど、あまり不安に感じていません)。

2011年8月7日日曜日

縦か横かそれが問題

前回iPhoneのヘッドフォン端子の位置に問題があると書いたので、その続きを書きます。まず以下にiPhoneから音を聞く方法を列挙します。
  1. 内蔵スピーカー
  2. 無線
  3. Dockコネクタから出力
  4. ヘッドフォン端子から出力
たいていの音楽アプリはヘッドフォンを推奨ということになっています。その理由は、1-3に関しては明確な欠点が存在するためです。

  1. 内蔵スピーカーの音質はあまり良くなく、モノラルである。
  2. 現状の無線の仕様では、音質の劣化があり、加えて遅延の問題が存在する。詳細)
  3. 据え置きのオーディオ機器接続が基本で、操作性に問題がある。
さてiPhone, iPod touch両方のケースにおいて、デバイスは縦持ちメインで設計されています。横持ちはデバイス設計上は、サブの使い方と言えます。ヘッドフォンミニジャックの位置に注目すると、iPhoneが上側にあり、iPod touchが下側にあります(ハード設計の問題という話を見かけましたが、公式の理由は知りません)。この不統一もデザイン上の問題になり得るのですが、それ以上に横持ち自体が問題になります。何故なら横持ちの場合、ヘッドフォン/イヤフォンのプラグが右手か左手にあたり少なからず邪魔になるからです。多くの音楽アプリでは、ギターやキーボード等のインターフェースを持つ故か、横持ち設計が多くなっているため、この問題は避けられません。

midif0nは横持ちでも、ホームボタンが右側になる方向しかサポートしていません。つまりプラグの位置はiPhoneは左、iPod touchが右になります。そして左側にメニューボタンを置いています(メニューを右に置かない理由はホームボタンの押し間違えを避けるためです)。このことから、残念ながらiPhoneの方がiPod touchに比べ、メインメニューが押しにくくなる故に操作性が悪くなっていると思います。このプラグの位置問題は、iPod touchに限定した場合、midif0nのUIのデザインの上下を入れ替えた理由でもあります。

ところで、Nintendo 3DSのヘッドフォンミニジャックは画面中央の真下です。デザイン上の観点を無視すれば、機能的にプラグやコードが一番邪魔にならない設計になっていると思います。ここまで書いてしまうと、電話機能のないiPod touchはデバイスの設計そのものを横型メインにした方が良さそうな気がしてきます。実際メディアプレーヤーの中には横型のものもあります。しかし、最近の製品でヘッドフォンミニジャックが真下についているものは見つかりませんでした。たぶんデバイスのサイズを考慮すると、ハードウェアの設計上、難しい問題なのだと思います。

ところでこの問題について、僕は長らく意識していませんでした。開発中はMac上のシミュレーターメインでテストしているということもあります。しかし、実機で動かす場合もヘッドフォンはほとんど使っていません。手間の問題もあります。またヘッドフォンをつけてテストをすること自体、サウンドプログラミング初心者には少々危険な行為ということもあります。


Tips
3DSには、3DSサウンドというAAC/MP3プレーヤーのソフトがありますが、Apple純正のイヤフォンでコントロールできるそうです。
※公式にサポートされている訳ではありません

※3DSのアンバサダープログラム(無償でVCソフトが貰える)に興味がある人は、新価格版を待たないので、リンク先をよくチェックすることをお勧めします。